辻野晃一郎氏の本を読んで

長らく読もうと思っていた、辻野晃一郎氏の「グーグルに必要なことはソニーが教えてくれた」という本を読んだ。

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

ソニーに就職を希望する僕にとっては、学部時代の留学の話、ソニーに就職してからもう一度した留学の話など、学習意欲をかきたてる内容もあって、すごく楽しんで一気に読んでしまった。もちろん辻野晃一郎さんが開発に携わった商品の開発秘話的な話も含まれていて、ソニーファンとしても楽しめるものであった。
また、辻野氏はグーグルで働きになった経験から、これからのクラウド時代について述べられていて、それは僕が思い描くクラウド時代とすごくマッチしていて、驚いた。下記には、そういったクラウド時代について思ったことをすこしばかり書いてみる。

  • コクーンが示した新しいTVの方向性

辻野氏はコクーンというTVの録画機器(に分類されるのかな?)を開発することで、新しいTV文化を想像しようとお考えになった。ユーザーの好みを判別し、自動で録画をする。ユーザーは好きなときに好きな番組を録画してある中から見たい番組を選び出し、視聴する。もちろんこの機能は現在のBDレコーダに搭載されている「おまかせ・まる録」機能に相当するものだ。まだクラウドという時代が到達する以前に、VODのようなギミックをつくりあげたことに僕は感動した。サジェスト機能を、録画機器のひとつの機能としてでは無く、その機能を全面に出したこの製品はオンデマンド型のTVスタイルを予期していたもののように思える。
本でも述べられているが、現在ソニーはgoogle TVを出荷しており、彼が予期した(ネット経由の)オンデマンド方式のTVを作り出している。
彼は著書の中で「コクーンでチャレンジしたものをもう一度やり直しているに過ぎない」と述べている。僕はソニーとグーグルがクラウド時代のTVを今、創りだしたことは、クラウド文化を家庭に浸透させる意味で大きいと思っている。

  • テレビはクラウドの情報を受像するための受像機に

辻野氏がテレビ部門でブラウン管に変わるテレビを作る、というエピソードの中に「テレビグループでは、テレビの定義を『受像機』ということであり、それ以上の発想がないように思えた。』と述べている。
もちろん僕たちはその後のテレビの方向性を知っている。デジタルテレビに移行して、ネットワークと接続されていく。
しかし、これからのテレビ、すなわちGoogleTVを始めとするクラウドでの運用を前提としたテレビは、逆にクラウドの情報を受像する受像機になるのではないか、と僕は思う。

インターネットで配信されるドラマや映画といったコンテンツをダウンロードし、見せる機器に。コンテンツはクラウドの中にあるので、本体に録画をしたり擦る必要はなくなっていくのではないか、と思うのだ。10年前に用いられた「受像機」(つまり放送を綺麗に見せるという意味)と今用いたネットに主眼をおいた「受像機」はかなり違うものに思えるかもしれないが、映像配信の方法が変わっただけで、受信してそれを表示するという主旨は一貫して続いていくと思う。
もちろん、インターネットに対応するというのは単純にVODが利用出来るという意味だけではないのは分かっている。同じ番組を見ている人同士のSNSであったり、双方向的サービスを提供するのは当然のことであると思う。ただ、録画もできる、といったようなコンテンツをこっち側に所持するための機能を拡大するのではなく、向こう側とのアクセスビリティを大事にしてもらいたいと思った。